vol4

vol42伝統工芸というダイアローグ
伝統工芸は写し

桐本 漆が今の生活の中で誤解されている。普段から使う物ではないみたいな。そうではなくて漆を使うことでこんな良い効果があるのだという事を伝えたい。自分は「いつもの器」って言っていますが「これ欲しい!」って言うものも漆で作りたいんです。

上出 僕が一番作りたいのは「いつもの器」なんですよ。九谷焼って美術工芸の部分が大きいのですが、やっぱり器を作りたいんです。器は昔から脈々と受け継がれてきたものと同じ机に並ぶので「普通なんだけどちょっと良いね」っていうのは難しい。

桐本 昔の良いものを単に写す人も居る。自分が良いものを見つけたから、それを自分なりに復活させるんだって。僕は自分の暮らしに置き換えて考えてみて、それを作って売ってみる。その反応を聞きながら改良しているんです。

上出 九谷は歴代の画風みたいなものが何パターンもあって殆どその写しなんです。でも、それ事態悪い事ではないし、模倣は文化だと思うんですが、僕はそれでは詰まらないので、一度きちんと自分の中を通して咀嚼して新しいものを作りたいと思っているんですね。祖父が写したものを咀嚼して生まれ変わらせる、それが僕の代の仕事だと思うんです。

地震のあと

桐本 地震が輪島の人にとっては大きな喪失で、不景気で弱っているところをやられた、その後何とかしようという雰囲気があんまり無い、変わろうとはしていない。それでも若手の一部がなんとかしなきゃって動いていたんです。今は彼らと楽しく交流している。地震をきっかけに産地全体ではなく、どうにかしようという個人と出会えた。そういう意味では良かった。これからです。

上出 逆にチャンスですよね。輪島じゃなくて九谷に同じような地震がきたらと考えると、焼き物だから割れるし、もっと酷い被害が出たと思います。みんな落ち込みますよね。これをチャンスに頑張ろうっていう雰囲気が出るかと聞かれると、難しいと思う。

桐本 やめた人がたくさん居ました。彼らは漆がそんなに好きではなかったんだと思います。好きで漆をやっていたのか、それともなんとなく儲かっていたから漆をしていたかっていうのがバーンと別れた。若い世代で本当に好きでやっている人が見えて、この人はと信頼していたベテランとかが居なくなったりして驚いたりもした。

上出 こんな言い方すると駄目なんだろうけど。好きじゃない人が辞めていって、はっきり別れたっていうのは良いというか、やっぱり親がやれというから好きでもないけど家業を継いでいるというのか、それが見えてくるという状況に関しては、誤解されそうだけど羨ましい部分がある。もちろん地震事態は羨ましいものではないし、能登の方々は本当に大変な思いをされたと思います。

腐らないように

桐本 僕は集まってするのが好きなんです。集まると一人の知恵だけじゃなくて、色んな考えが出てくる。これからは家業だからだけではなくて県外でも海外でもヤル気があるんなら、一緒にやっていこうか、というような懐の広さを持つようにみんなで相談していかなくてはいけないと思う。

上出 僕は家というか、血というものは大事にしていきたい。ただ、興味のある人や好きな人にはどんどん関わっていってもらいたいし、プーマの自転車とかみたいに外から応援してくれる人との仕事は今まで興味をもってくれなかった人にも見てもらえる面があってそれは嬉しいし大切にしたいです。

桐本 僕は土の人と、風の人が居ると言っているんですが僕は土の人なんです。土の人は時々耕してもらえないと腐っちゃうんです。風の人だと自由で、ふーっとどこかへ言って新しい空気を吸うんですよ。これからは風の人が増えると思っているんですよ。その風を土の人が吸って、それで活性化するんじゃないかなって。それが上手く行くと輪島が、そして伝統工業がもっと元気になるようなイメージを持っています。

上出 自分で自分の土を耕すのって大事だと思うんですよ。最近はなんだか別のところにある良い土を持ってくるって言うのが多いと思うんですよ。自分のところ耕さないで。

桐本 どんな人でも面白い刺激を持ってきてくれる、産地とデザイナーが共同作業するときもデザイナーさんにはある程度制限を与えて、ミニマムな世界でやってもらう方が良いように思います。失敗しているのは自由にしてもらう、そうするとデザイナーのエゴ・主張ばかりで売れるものは出てこない。デザイナーのアイディアとデザインについて言い争える位まで勉強しないと。

上出 デザイナーと伝統工芸のコラボレーションって成功している例はほとんど無いと思います。産地側がビジョンを持っていなくて「何でもいいんでやってください」って。誰かに託したいって思ってやる。当然やっても上手く行かない。どうすれば成功するのかっていうのは悩んでいるんだけれど、僕が一緒にやったMARUWAKAという人は、今こちらに住まいを探しているんですよ。たまに産地にやってくる位では成功するわけがない。プーマのプロジェクトも、桐本さんのルイヴィトンにしても、最初から素晴らしい伝統工芸が、ブランドとコラボレーションしないと、みんなに見てもらえないっていうのは悲しい。本当は自分たちだけで、なにかドーンとやって、もっと若い人にも伝統工芸に興味を持ってもらいたい。

桐本 オシム監督の「走りながら考えろ」っていう言葉が好きなんですよ。考えながら走る。来る企画は全部受ける。もっと輪島や能登の町が元気になるように走っていきます。

(二〇〇八年二月九日、G-WING’Sギャラリーにて)

進行・文/中西研大郎

(c)Kanazawa Art Event Calender Equal

 
 

Web Equal  vol.4 2008.5~7

vol4kamidekeigo

かみで  けいご
上出惠悟
(九谷焼)

2006年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。仝年九谷焼での初作品「甘蕉」を発表。大学卒業後石川へ戻り、デザイナーとして家業である上出長右衛門窯に従事。
 

vol4kirimoto

きりもと たいいち
桐本泰一
(輪島塗)

1985年筑波大学芸術専門学群生産デザインコース卒業。コクヨ(株)意匠設計部を経て、1987年家業の桐本木工所入社し、創作活動を行っている。