新館長に聞く。

金沢21世紀美術館の新しい館長がどんな人なのか、これからどうして行くのかといったことに関心が集まっています。そこで直接聞いてみようということでお願いしました。着任されて三ヶ月程ですが金沢に対する認識からお聞かせ下さい。

秋元/街のサイズがとても良い。歩いて行こうと思えば歩いて行ける中心部への集積感もまた良い。残るものは残っていて商店街も他の地域と比較すると活力がある。そういった意味で街のいたるところでみなさん頑張っていると感じる。

あとは伝統的なものが強く、生活文化としても残っている。みんな色々な活動をやっている。しかし、あぐらをかいていると成長が止まってしまう。街をよりよくして行くために、アートも街づくりに貢献したいと思います。

それには、それぞれの人たちの活動が競争力を持つというか、外から見えるような状態にまで押し上げて行く。そういう意味では「イコール」でされていることは重要です。特効薬がありそうですが実はなくて、結局ひとつひとつを丁寧に作っていくしかない。それには諦めないのが大事ですね。

実は「イコール」のキャッチフレーズも「諦めずに出し続ける」なんです。

秋元/嫌な事っていっぱいある。やる気を削ぐような事が。でもそれに負けてはいけない。

時代の視点

ビジョンについてお聞かせ下さい。

秋元/文化的なもの、先ほどの伝統もですが、業界が安定していて、その中で美術的な価値がもう決まっている。現代アートの役割は、もっと今の時代の視点で、ある種のヒエラルキーをシャッフルすることだと思っています。美術館の中で最新のアートや海外で注目のアートを紹介することも価値はあるのですが、そういったものと同時に今の21世紀の頭で環境問題や心の問題といった、この時代を生きている人たちが共有できるような問題で展覧会を作ろうと思っています。今の時代にとって年齢を超えて面白いと思えるものを取り上げる。社会的な視点の中で美術を位置付ける。これは直島からやり続けていることなので同じように
やっていきたい。

まだ、やり切れていない

美術館の外側にはギャラリー等のアートスペース、地元のアーティストがいます。そういったものについてはどのように考えられていますか。

秋元/これまでの皆さんの活動は、大小関係なくリスペクトしています。ですから私が関わったことで変ってしまうのは困ります。それよりも美術館が点のようにある。外からは評価されているかもしれませんが、良い意味で若いアーティスト等に刺激を与えているかというと、そのあたりはまだやり切れてはいないと感じている。もっとやり取りする場を作ろうと考えています。まずあるものを全部浮上させてみるといった、美術館が検索エンジンみたいに機能すると面白い。若い人達は、これは自分自身にも言い聞かせている所もありますが、全部あからさまに、正々堂々とした方がいい。怖いものなんてない。若い現代美術をする人から悲観的な意見を聞くことがありますが、絶対いけると思った方がいい。

しかし現実は企画しても、知り合いと、知り合いの知り合いだけが来る。そういった状況を見かけます。

秋元/良い仕事をすれば誰かが見つけてくれる、評価してくれると思っている人がいる。でもそれだけでは足りない。どんな有名な人でも自分で自分のことをアピールしている。自分達のしていることを自分達でちゃんと伝える。今はそうでもしないとかき消されてしまう。美術はゆるやかな社会運動の様になっていくことが大事だと考えています。金沢21世紀美術館だけではなく金沢の現代アートが何がしか金沢の街を変えていくような力を持って欲しい。今は全部エンターテイメントだから。

金沢21世紀美術館も最初、遊び場的な言われ方もしましたね。

秋元/遊び場は違うと思いますが、堅苦しい美術館ではなくて開放感のある気楽な美術館なんだと思います。楽しいというよりも開かれていることや、フラットであること。これは建築のコンセプトであり、美術館のコンセプトなんです。それが新しい社会像を写している。つまり「フラットな社会」「透明性のある社会」そういったものが建物の構造や運営のあり方に反映されている。交流課があり、市民活動とコラボレーションしながら企画を発展させていくあり方、これはこの美術館のよさなので発展させていきたいと思っています。美術館の活動は理想をもつことが大切です。「イコール」はフリーペーパーですがフリーはタダと言う意味だけでなく、フリーダムだと思います。たとえばこじつけでもいいから、その中に理想、理念をもつのが大切です。ウインドウズみたいに知的財産で大金を稼ぐ人がいる。もう片方に無料でソフトを配る人もいる。最後はどちらがその人にとってハッピーになれるか。アーティストは世の中の事を普通の人よりも考えて、どういう世の中を夢見ているのかを作品を通して見せて欲しい。

街へ出る

最後にアピールなどあればお願いします。

秋元/来年か再来年に街中で展覧会がしたいと思っています。美術館だけではなく街のいくつかのエリアを使った展覧会です。今は場所や、サポートしてくれそうな人の情報を集めています。この記事を読んでいる人で「こういう事をしているんだけれど、どうよ?」といったアピールや、面白いことをしている人は手を挙げて欲しい。

それは楽しみですね。本日はお忙しい中ありがとうございました。

(20076月20日金沢21世紀美術館館長室にて)

 

(c)Kanazawa Art Event Calender Equal

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金沢21世紀美術館 館長
秋元 雄史

プロフィール/1955年生まれ。
国吉泰雄美術館、ベネッセアートサイト直島(旧・直島コンテンポラリーアートミュージアム)の企画運営に携わり、2007年4月より金沢21世紀美術館館長。

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